国境なき記者団が、ウクライナで活動するジャーナリストを支援

国境なき記者団(RSF)はこの半年間、ウクライナでの戦争を取材する600名以上のジャーナリストへの同行や支援を行い、リヴィウとキーウに開設した報道の自由センターを通じて、防護装備品、資金援助や心のケア、応急処置や心身の安全のためのトレーニングを行ってきた。

 

2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻して始まったこの戦争は、同時に全面的な「情報戦」でもある。世界各国からジャーナリストたちがウクライナへと赴いた一方で、ウクライナの報道人たちは戦場ジャーナリストへと転身を迫られた。その結果、現在約9000名のウクライナ人および外国人記者たちが、この戦争報道に携わるジャーナリストとしてウクライナ当局から認定を受けている。

 

この半年間に、ウクライナでの取材活動に従事する中で8名の記者たちが亡くなり、16名が負傷した。その中には、この戦争を報道することに命を捧げたウクライナ人のフォトジャーナリスト、マクシム・レヴィンやフランス人のビデオレポーター、フレデリック・ルクレール=イムホフ氏も含まれている。RSFは、戦争犯罪の犠牲者たちを擁護するために告訴の申し立てやその他の司法に関する取り組みを行うとともに、現場のジャーナリストたちを支援し、彼らの安全性を向上させるための様々な活動を行っている。8月1日現在の時点で、600名以上のウクライナ人および外国人記者たちへの支援を行ってきた。

 

リヴィウとキーウを拠点とする報道の自由センターは、224名のジャーナリストに防護装備品を貸与

 

ロシアのウクライナへの侵攻開始から2週間の後、RSFはジャーナリストに各々の防護装備品を無償貸与することを目的として、ウクライナ西部の都市・リヴィウにあるウクライナ・メディア・センター構内に報道の自由センターを開設した。3月11日の開館式には、RSF事務局長であるクリストフ・ドロワール、RSFのウクライナにおけるパートナーであるNGOマス・インフォメーション研究所(IMI)のオクサナ・ロマニウク所長、報道の自由センターのコーディネーターであるアレクサンダー・クエリ氏が出席した。

 

5月18日、RSFは貸与装備品の需要に応えるため、そして首都近郊からロシア軍が撤退したことを受けて、継続的に行ってきたジャーナリストへの支援を発展させる目的で、キーウにあるIMIの敷地内に2つ目の報道の自由センターを開設した。

 

RSF報道の自由センターの2つの支局は、約半年の間に、224名のジャーナリスト――うち約4分の1は女性――に防護装備品を提供してきた(8月1日現在のデータ)。これらのジャーナリストたちの国籍は29カ国に及ぶが、その中でもウクライナ人の利用者が最も大きな割合を占めている。

 

防弾ベスト555着とヘルメット549個を記者たちに貸与

 

パートナーであるIMIや、RSFに提供された装備品の配布を行ってきたウクライナのジャーナリスト全国組合(NUJU)と緊密に連携することで、RSFはウクライナ人および外国人ジャーナリストたちに以下のものを提供することができた。
  • 防弾ベスト555着

  • ヘルメット549個
  • 応急処置セット1,011個
  • ソーラー電池342個
  • プロトンのVPNおよび無制限にアクセスできる電子メールアカウント50個

 

175 名のジャーナリストを対象とした安全および応急処置トレーニング

リスク防止能力育成の必要の高まりに応じて、RSFはジャーナリストのための安全ガイドを公開した。ハイリスク地域に赴く記者に実践的なアドバイスを提供するために、ユネスコの協力を得て作成された本マニュアルは、NUJUによってウクライナ語にも翻訳された。RSFはまた、ウクライナ語と英語でトレーニングを実施し、これまでに計175名のジャーナリストが参加した。

これらのトレーニングは、戦火の中で記者たちが身を守り、自立して活動することを助けるよう設計されており、以下の項目に焦点を当てて行われた。

 

  • 身体的安全
  • 心理的安全
  • 応急処置

 

9月以降キーウにおいて、とりわけウクライナ人ジャーナリストを対象とする新しい一連のトレーニングセッショが予定されている。

 

92名のウクライナ人ジャーナリストと24のウクライナメディア企業に資金援助

RSFは、戦争の結果として非常に不安定な状況に置かれている独立系のウクライナ人ジャーナリストとその家族を支援するため、個人に対して資金援助を行う仕組みを作り出した。RSF の現地パートナーによって特定された困難な状況にある人々に対し、RSFは以下のような支援を行っている。

 

  • 被占領地域や前線などから緊急避難した、子どもや高齢の親族を伴うジャーナリストの再定住費用
  • ジャーナリストとしての活動中に負傷した場合の医療費
  • 破損または没収された独立系ジャーナリストの機材の修理または交換費用

 

過去6ヶ月間に、計92名のウクライナ人ジャーナリスト(うち 67%に当たる62名が女性)が、主にRSFのパートナーであるIMIおよび現地のジャーナリスト組合、NUJU、そしてまたRSF支援部門から直接、この形式の資金援助を受けた。

 

同時に、広告の欠如、購読者数の減少など、戦争による収入の喪失に見舞われたウクライナの独立系メディア企業24社に対して、その運営費を賄うための財政支援を行った。これらメディアの多くは戦争によって最も被害を受けた南部と東部を拠点としており、これらの地域では、プロパガンダや虚偽情報などの試みに対抗するため、信頼できる独立したニュースや情報の必要性がかつてないほどに高まっている。

 

心理的な支援 

RSFはまた、予防的かつ自己評価のためのリソースと、24時間365日対応可能なホットラインサービスを提供するEutelmedオンラインプラットフォームへのアクセスを組織、提供することで、ジャーナリストへの心理的な支援も行っている。本プラットフォームでは、ウクライナ語やロシア語など、希望する言語での相談も可能となっている。これまでにRSFの提供するアクセスを利用したジャーナリストのうち、73%が女性である。

 

これらの活動は、以下の団体からの財政支援を受けて実施されているものである。
アデシウム財団、欧州委員会、フランス財団、フリット・オルド財団キング・ボードゥアン財団、英国及び米国国営宝くじ、クラーマン・ファミリー財団、ライムライト財団、レモングラス財団、オーク財団、オープン・ソサエティ財団、シェフリン財団、デモクラシー財団、在フランス台北経済文化代表処Google.org Charitable Givingから資金提供を受けたタイズ財団、ユネスコ、ウェルスプリング慈善基金

 

またRSFは、サイエンスジャーナリストと情報報道機関協会(AJSPI)、キャバリエ&アソシエイツ通信社 (CAPA)、フリー・プレス・アンリミテッド(FPU)、ロリー・ペック・トラット、及びワシントン・ポストからの支援に感謝申し上げる。