仏の若手ジャーナリスト&人気TVキャスター、フランソワ・メナジェ氏が福島原発事故関連本『Fukushima, le poison coule toujour(福島、毒はいつも流れて)』を出版 

 JFJNとの関係の深いフランス人ジャーナリストで、調査報道番組「Capital」(仏テレビ「M6」)のキャスターを務めているフランソワ・ザビエル・メナジェ氏(35)が、福島第一原発爆発事故から5年となる節目の今年3月、福島原発事故に関する『Fukushima, le poison coule toujours (福島、毒はいつも流れて)』を出版した。

この本はメナジェ氏にとってのデビュー作であり「4年間かけて福島を取材し、1年間かけて執筆しました」という力作。メナジェ氏は2011年3月の福島第一原発事故以来、警戒区域を中心に10回以上現場に足を運んできた。

著書には、震災当時の日本の首相だった菅直人氏への独占インタビューをはじめ、警戒区域内で牛を飼い続ける大熊町の酪農家、家畜の殺処分に反対する『希望の牧場』の代表・吉沢正巳氏、南相馬市の仮設住宅で暮らすシングルマザー、東京電力や経済産業省前で抗議活動をする人々、ジャーナリストの桐島瞬氏や田中稔氏、『週刊金曜日』の平井康嗣編集長、国境なき記者団などが登場する。「福島問題を多面的に知ってもらうため、さまざまな分野の人を取材しました」(メナジェ氏)。

しかし、メナジュ氏にはこの本の執筆にあたって心残りなことがひとつあるという。それは「多くの質問や疑問があったが、政府や東電側から十分な回答が得られていない」こと。さらにメナジェ氏は、震災直後から福島第一原発施設内への立ち入り取材を希望しているが、現在まで許可を得られていない。

原発問題は福島に限らず、フランスでも話題になっている。「今年に入ってからフランス国内では原発施設の事故が相次いで報道され、国内の多くの原子炉があと数年で40年の耐用年数を迎えようとしています。そのためフランスでは、今後、各原子炉が耐用年数の延期が可能かどうかの検討を始めなければなりません」

こうした時期に出版されたこともあり、本著はフランス国内の7つのテレビ番組や5つのラジオ番組でも紹介され、読者への反響も大きい。

福島取材は、これからもずっと継続するというメナジェ氏。「私は脱原発派でも推進派でもありません。そして、日本やフランスの多くの人は原発についての専門的な知識を持っていないでしょう。私もそのひとりです。そのため、この問題に意見したり安易に批判したりすることはできませんが、ジャーナリストとして、福島原発事故によって、何が起きたのかを記録することはできる。ずっと記録し続ける。それが私の使命なんです」

※……現在、メナジェ氏は、この本の日本語訳版を出していただける出版社などを探しています。ご興味のある企業・団体の方はJFJNまでご連絡ください。

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